かつてリビングルームは「お茶の間」でした。
家族いっしょに食事をして、テレビを見る。
そして時々、子どもたちは宿題、大人は読書…いつも同じ部屋にいることが家族の理想とされてきました。
しかし、時代とともに家族のライフスタイルは変化して、リビングルームでの様々な過ごし方が始まりました。
大切な家族がゆるやかに結ばれながらも、選択の自由はひろがり、それぞれ個別の過ごし方が求められるようになりました。
現代の家族の風景。
家族みんなが一緒にいても、ひとりひとりはスマホを手に持ち、情報や娯楽のヴァーチャルな世界と現実とをオーバーラップさせて生活しています。
LINEでは「ここにいないはずの友達たち」とつながり、お互いの時間をシェアしています。
そして、家と職場の関係も見直され、テレワークの時代が始まりました。
「家族のいる空間で仕事をする」というシーンも珍しくありません。
さらにもっといえば、
「家という場所を地域の人たちとシェアする」という考え方も起こりつつありますね。
「家をひらく」「共に生きる」という新しい発想です。
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そんな新しい暮らしのために「デュアルリビングルーム」を提案します。
(1)従来型リビングルーム(基本3タイプ)
(2)新しいデュアルリビングというスタイル
(3)設計事例「海のいえ、風の工房」
(4)設計事例「ハウス・ハックルベリーフィン」
(5)土間のある家・作品集
1. 従来型リビングルーム(基本3タイプ)
リビングルームは「家族みんなの共用空間」。
個室群との関係に着目して、各タイプ別に見てみましょう。
個室の独立性を重視する配置です。
大きめのリビングルームと、家族の人数に応じた数の個室が廊下をはさんで配置されます。
玄関から廊下を通って直接各個室へ入ることが可能。
近代型「個室主義」の考え方です。かつて多くの人が思い描いたマイホーム像の代表といっていいでしょう。
一般の方がはじめて間取りを描くとき、たいていこのタイプになります。部屋の数を増やすほど廊下(動線)が長くなる傾向にあるので注意が必要です。
家の中心に大きなリビングルーム。その周りを囲むように個室群を配置します。
個室に行くには、必ずリビングルームを通ります。
個人よりも「家族」を重視する構成。日本の「農家造り」に起源があると考えられます。
リビングルームは主要動線(通路)を兼ねるので、必要分よりやや大きくして余裕のあるサイズにする必要があります。
上の2つのタイプの折衷型です。
特定の個室だけを動線から独立させて、その他の個室はリビングを中心に配置します。
独立させる個室用途としては、書斎や夫婦の寝室、が考えられます。
または水まわりを組込んで独立した生活スペースにすることもできます。2世帯住宅でも応用されますね。
アイディアしだいで、バリエーションが広がるタイプです。
以上が、いわゆる「リビングルーム」の代表的な3つのスタイルです。
2. デュアルリビングという第4のスタイル(新しい形)
さて、本題の「デュアルリビング」の構成を見てみましょう。
エスが提案する第4のカタチ「デュアルリビングルーム」。
適度な広さのリビングルーム(共用空間)を2つ設ける方法です。
デュアル(dual)とは「2重」「ふたつの」といった意味。新しい暮らし方のキーワードです。
多様化する価値観。一件の家のなかでも、ひとつのスタイルに縛られない別の選択肢があってもいいんじゃないか・・と、私は考えます。
デュアルリビングルーム。
どうでしょう?
生活像が思い浮かびますか?
この考えは、決して家族をバラバラにしようとするわけではありません。
リビングがふたつあれば、子どもが個室に閉じこもってしまうことも減るかもしれませんよね。
工夫次第で新しい生活のシーンがどんどん発見できるでしょう。
3. 設計事例「海のいえ、風の工房」
では「デュアルリビング」の作品事例を見てみましょう。
海のいえ、風の工房
2階は、天井の高い開放的なリビングルーム。
これだけでも素敵ですね。
そして、1階には玄関を兼ねた土間。
薪ストーブのある、第2のリビングルームです。
リビング機能だけでなく、階段や玄関という「動的な機能」を兼用させているところがポイントです。
この「第2のリビングルーム」の使い方としては、
(1)賑やかなメインリビングを離れて、くつろぎながらテレワークする。
(2)土間を活用して「工房」として利用する。
(3)友達たちとシェアするリビングルーム。
(4)地域の人たちを招いて、ワークショップや音楽会。
いろんなアイディアが浮かびますね。
4. 設計事例「ハウス・ハックルベリーフィン」
もうひとつ、ご紹介。
コンパクトな規模でのケースです。
ハウス・ハックルベリーフィン
2階は、大きな窓のあるリビングルーム。
向かいの公園の緑を借景しています。
そして1階の土間。
通路を兼ねた「通り庭」のようなリビングスペースです。
小さなテーブルと椅子を置いて過ごしたり、趣味のスペースとして活用できます。
上の2つの作品、どちらも「土間」をつかったデュアルリビングです。
そして1階と2階、テイストをかなり変えてデザインしています。それぞれ違う過ごし方をしたくなりますね。
プランニングのコツとしては、通路や玄関など家族が必ず通る場所と兼用して「リビング機能」をもたせて、他の空間と連携させて広々とさせること。
それそれの空間に「動き」を与えることがポイントです。
5. 土間のある家・作品集
エスでは「土間のある家」として、大小いろいろなタイプのデュアルリビングを設計しています。
詳しくは作品集ページをご覧ください。
▶http://www.sp-n.gr.jp/category/saku/doma
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