大きなリビングルーム住宅「ハウス・ハックルベリーフィン」の2階リビングルームの様子です。
天井の高い空間に、大きな窓。そとには公園の桜の樹がみえています。

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この家は、1階と2階あわせて60㎡ちょっと。
個室や収納室、水まわりを全てぎっちりとコンパクトにして1階にまとめて、2階部分をすべてリビングルームにしています。
小さいけれど、豊かな空間をもつ素敵な家です。
設計プロセスでは、限られた条件の中での面積配分が主要なテーマとなりました。
利便性からいえば、すべての室をバランスよく配分して、細かく壁で仕切ることも選択肢にありました。
でも、お施主さんと設計者(僕)は、思い切って家の半分の2階をすべて間仕切のないリビングルームにすることを選んだのです。
それが、この写真のリビングルームです。
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今まで、数多くの住宅をつくり、それぞれの家族の人たちと議論を重ねて、様々な「家族の考え方」に接してきました。
そこで僕は、一般論として「個人空間よりも共用空間のほうが大切だ」と考える家族が多いことを知りました。
たとえば、「子ども部屋がほしいから、家をつくる」ということよりも、「家族みんなの集まる場所、大きな共用スペースとして家をつくりたい」という考えです。
「家をつくる」ということはつまり、
「共用空間をつくる」ということ。
どのプロジェクトも、テーマはそこに行き着いています。
では、共用空間とは何か。
それは、家族のためのリビングルームのことです。
家族が家族であるための場所。
個人が、まわりの人間に支えられて生きている、ということを身近に感じられる場所です。
そのためには、リビングルームはできるだけ広くつくったほうが良い。
「家族」というルールの中で、いろんなこと自由にやってみる。
公園のような、にぎやかな街のような、落ち着いたカフェのような、そんないろんな雰囲気と機能を担うためには、できるだけ広いほうがいい。
これは、非常に当たり前のことだと思われがちだけれど、あらためて正面からガッチリ考えるべきこと、家づくりにとってすごく大事なことなのです。
つくられる「家」という空間の中で、
皆が、どういうふうに「家族」としていられるか。
「リビングルーム」のつくり方は、家づくりのテーマそのものなのです。
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さて、「ハウス・ハックルベリーフィン」。
リビングを広くするだけじゃなくて、天井を高くして、窓も大きくするのは何故だと思いますか?
天井が高くて窓が大きいなんて当り前..だと思われるでしょうが、これもあらためて正面から考えた、ちゃんとした設計意図があります。
すなわち、
2階は、1階よりも眺めのいい場所。
天井を高く、窓を大きくすれば、そこは外部と一体化した明るくて風通しのいい場所になる。
そうすれば、天候状態や時刻と空の色の移りかわり、近隣の環境状態や人々の様子、いろんなことがダイレクトに感じられる。つまり、自分が生きている世界全体を感じることができる。
「家族」は、その家族だけで生きているのではなくて、当然、まわりの社会、自然環境のなかで生きている。
世界は、閉じこもった空間じゃなくて、もっとオープンな空間です。
人間も、その大きな生態系の中にいる。
この世界の広がりを感じて生活すること。
それが、小さな家の中での「豊かな暮らし」じゃないだろうか。
..と、お施主さんとの議論と設計プロセスを通して、そういうデザインコンセプトが発見されたのです。
家づくりは、奥が深くて、本当に面白い。

(初出:OPEN-G 日記・2010年4月)


▶作品ページ
【ハウス・ハックルベリーフィン】
公園を借景する大きな窓・通り土間・ロフト