|東京都・目黒区
|マンション屋上・リノベーション
 




屋上のメリークリスマス

もう随分と前の話。2004年の12月、慌ただしいある日、1組の若いカップルが事務所を訪ねてきた。

クリスマスとお正月で、ささやかなガーデンパーティを開きたい。
都心のあるところに所有するマンション、広いルーフバルコニーにウッドデッキと、周りの視線を防ぐフェンス、雨露をしのぐ簡単な屋根をつくりたい。予算は100万円くらい。残された時間はおよそ2週間。

いや無理だよ…と思いながらも、引き受けた。
大急ぎで現調、クライアントの要望を詳しく聞き、マンションの管理組合にヒアリング、そして急いで設計。短期間でできる仕様を考えた。
…と、ここまでは簡単だ。
問題は、二つ。
予算内に収まる材料手配と、この年末に急ぎの仕事を受けてくれる職人さんが見つかるかどうか?
当然、懇意にしている工務店さんはどこもゴメンナサイの返事だ。

そして、
どうやって探し出したかは忘れたけれど、デッキ材は、大手建材メーカーに材料を納めている輸入元の業者さんを突き止めた。そして、そのルートから年末に動ける腕のいい大工さんも確保。
さらに屋根にかけるテント材は、電話帳で調べた神田あたりのテント問屋さんに直接アタック。面倒な加工を依頼してくる一見さんの怪しい建築家の無理難題を笑顔で引き受けていただいた。


かくして、ぎりぎりクリスマスイブの前夜、無事に完成。
「パーティ出来ました、ありがとうございました!」との連絡をいただき、工事費も大晦日の日に有り難く頂戴した。
でもそういえば、クライアントには名前を聞いて連絡先の電話番号を聞いただけ。どんな人たちなのかは知らないし、彼と彼女との後日談もない。ふっと過ぎていった、夢みたいな一瞬の出来事だった。